特別養護老人ホーム(特養)は、地域の高齢者福祉を支える重要な施設です。その一方で、人件費や食材費、光熱費の上昇に加え、人材確保も難しくなっており、経営を取り巻く環境は厳しさを増しています。実際、同じ特養でも、黒字施設と赤字施設では利用率や利用者単価、人件費率などに差がみられます。
経営改善というとコスト削減に目が向きがちですが、それだけでは十分ではありません。稼働率・利用者単価・人員配置・経費・資金繰りを一体で見ていくことが欠かせません。本記事では、一次情報をもとに特養の経営状況を整理し、赤字につながりやすい要因と改善のポイントを解説します。
独立行政法人福祉医療機構(WAM)が公表した2024年度の特別養護老人ホームの経営状況によると、赤字施設の割合は従来型で45.2%、ユニット型で31.5%でした。従来型では4割を超える施設が赤字となっており、厳しい経営環境がうかがえます。
ただし、施設形態や規模、地域によって経営状況は異なります。平均値だけを見て「自施設も同じ」と判断するのではなく、利用率や利用者単価、人件費率などを個別に確認し、どこで収支が悪化しているのかをつかむ必要があります。
WAMが2020年度から2024年度まで同一施設を比較した分析では、利用者1人1日当たりのサービス活動収益は約5%増えた一方、サービス活動費用は約17~20%増加しました。収益が伸びても、それを上回るペースで費用が増えれば、当然ながら利益は残りにくくなります。
費用を押し上げているのは、賃上げに伴う人件費だけではありません。給食費や水道光熱費などの上昇も施設経営に影響しています。「売上は増えているのに利益が残らない」という場合は、収益と費用を分けて推移を見ると、原因をつかみやすくなります。
特養では、人件費や施設維持費など、利用者数にかかわらず発生する固定的な費用が少なくありません。そのため空床が続くと、収益への影響が大きくなります。WAMの2024年度分析では、特養入所の利用率は従来型で黒字施設93.9%、赤字施設91.5%、ユニット型では94.3%と89.6%でした。
短期入所でも、黒字施設のほうが高い利用率となっています。退所から次の入所までの日数を短くし、必要に応じて空床利用型短期入所につなげることが、収益確保のポイントです。待機者の人数だけでなく、「今すぐ入所につなげられる候補者」がどの程度いるかも把握しておきたいところです。
利用者数が同じでも、算定している加算によって施設の収益は変わります。WAMの分析では、黒字施設と比べて赤字施設の利用者単価は、従来型で126円、ユニット型で249円低い結果でした。要介護度には大きな差がなく、加算の算定状況などが影響している可能性があります。
まずは現在算定している加算と、要件を満たせば算定できる加算を整理してみましょう。ただし、加算は取れるだけ取ればよいわけではありません。算定に必要な人員や業務負担も含め、実際に採算が合うかを確認することが大切です。
介護サービスでは、人件費が経営に占める割合が大きいため、人員配置の状況は収支に直結します。WAMの分析によると、人件費率は従来型で黒字施設61.5%、赤字施設69.7%、ユニット型では黒字施設59.8%、赤字施設68.6%でした。
だからといって、人件費率を下げるために単純に職員数を減らすのは適切ではありません。利用者数や業務量に見合った配置になっているかを確認し、残業、夜勤、記録、間接業務まで含めて見直す必要があります。ICTや介護テクノロジーも、職員の負担を減らす手段の一つです。
特養では、食事の提供や入浴、空調などに継続して費用がかかります。食材や電気・ガスなどの価格が上がれば、その影響を避けるのは簡単ではありません。WAMの2024年度分析でも、従来型・ユニット型ともに経費率が前年度から上昇し、給食費率や水道光熱費率にも上昇がみられました。
とはいえ、サービスの質や安全性を犠牲にしてまで経費を減らすべきではありません。給食費、光熱費、委託費、消耗品費などに分け、どの費用がなぜ増えたのかを確認することが先決です。そのうえで、契約条件や購入方法、設備の使い方に見直せる余地がないかを探ります。
稼働率を見るときは、月末時点の数字だけでは不十分です。空床がいつ、どのような理由で発生し、何日続いたのかまで確認すると、改善すべきポイントが見えてきます。退所から次の入所までの日数や入院による空床、短期入所の利用状況などを分けて把握しておきましょう。
WAMの分析では、特養入所と空床利用型短期入所を合わせた黒字施設の利用率は、従来型・ユニット型とも94.7%でした。入退所の管理を相談員だけに任せず、施設全体で状況を共有することが稼働率の改善につながります。医療機関やケアマネジャーとの日頃の連携も欠かせません。
加算による収益改善を考えるなら、まず現在の算定状況を一覧にするところから始めます。すでに算定している加算だけでなく、要件の一部が足りず算定できていないものや、上位区分へ移行できそうなものまで整理すると、優先順位を付けやすくなります。
見るべきなのは報酬額だけではありません。職員配置や研修、記録、会議など、新たに生じる負担も含めて判断します。加算による増収と運用コストを比べ、無理なく続けられる仕組みにすることが大切です。介護報酬改定の際には、算定要件も改めて確認しましょう。
人員配置を見直す際は、人件費の総額だけでなく、人件費率や利用者10人当たりの従事者数なども確認します。さらに、フロアや時間帯ごとの業務量、残業時間、夜勤体制まで可視化すると、「人が足りない場所」と「配置を見直せる場所」が見えやすくなります。
介護人材の確保が難しくなるなか、採用を増やすだけで課題を解決するのは現実的ではありません。記録や情報共有、周辺業務を効率化し、職員がケアに集中できる時間を増やす視点も必要です。業務改善と人材定着は、別々ではなくセットで考えるほうがよいでしょう。
経費を見るときに、「前年より増えた」という確認だけで終えてしまうと、具体的な対策にはつながりません。給食費、水道光熱費、委託費、修繕費、消耗品費などに分け、予算や前年実績と比べながら、単価が上がったのか、使用量が増えたのかを切り分けます。
たとえば光熱費が増えている場合、契約単価だけでなく、設備の老朽化や運転方法が影響しているかもしれません。削れる費用と、サービスの質を守るために必要な費用を分けて考えることがポイントです。目先の節約だけでなく、中長期で効いてくる改善策も検討しましょう。
決算書上は黒字でも、手元の資金に余裕があるとは限りません。ユニット型では施設整備時の借入金返済、多床室では建物や設備の老朽化に伴う大規模修繕など、将来的にまとまった資金が必要になることがあります。損益と資金繰りは分けて見る必要があります。
WAMでも、単年度の黒字化だけを目指すのではなく、中長期的な視点から毎年必要となる資金を明確にすることが示されています。借入金の返済や設備更新、修繕計画から逆算して必要資金を見積もることで、急な支出にも対応しやすくなります。
収益面では、特養入所の利用率、短期入所の利用率、空床日数、利用者単価、加算の算定状況、待機登録者数などを確認します。どれか一つを見るのではなく、複数の数字を組み合わせると、収益が伸びない理由を具体的に捉えやすくなります。
たとえば、待機登録者が多いにもかかわらず利用率が低ければ、入所調整に時間がかかっていたり、候補者への連絡体制に課題があったりするかもしれません。売上そのものだけでなく、売上につながる過程を数字で追うことで、改善策を立てやすくなります。
費用面では、人件費率、利用者10人当たりの従事者数、経費率、給食費率、水道光熱費率などを継続して確認します。サービス活動増減差額比率などもあわせて見ると、収益と費用のバランスを含めて、施設全体の収支構造をつかみやすくなります。
ただし、全国平均に近づけること自体が目的ではありません。施設規模や建物、地域、人員体制によって適正な水準は変わります。自施設の過去実績や予算、条件の近い施設と比べ、変化の大きい項目から確認するほうが、実際の改善にはつながりやすいでしょう。
特養の経営環境は、人件費や物価の上昇、人材不足などを背景に厳しさを増しています。とはいえ、経営改善を理由に人員や経費を一律に削れば、サービスの質が下がったり、職員の負担が増えたりするおそれがあります。それが人材の定着や利用者の確保に響けば、かえって経営を悪化させかねません。
安定した経営を続けるには、利用率、利用者単価、人員配置、経費、キャッシュフローの5つを継続して確認することがポイントです。数字を定期的に見える化し、どこに課題があるのかを捉えたうえで、一つずつ改善していく。その積み重ねが、無理のない施設運営につながります。
また、自治体によっては特養を対象とした独自の経営支援策を設けています。たとえば東京都では、特別養護老人ホーム等を対象とした経営支援事業が案内されています。自施設の所在地でも利用できる補助金や支援制度がないか、あわせて確認しておくとよいでしょう。
名古屋市を中心に愛知・岐阜で年間約5棟の医療・福祉施設の実績あり(2026年1月調査時点)※1。木造建築に特化して35年。仕入れ値や人件費を抑え、鉄骨造などと比べて坪単価で約30万円ほど削減できる。
グループ会社が訪問看護ステーションや有料老人ホームを運営。 介護関連の資格者であるスタッフが、直近の医療・福祉制度を踏まえ、開設前のサポートなど幅広く対応。
| 種別 | 住宅型有料老人ホーム (ナーシングホーム) |
|---|---|
| 規模 | 26室 |
| 所在地 | 愛知県名古屋市守山区 |
調整区域に福祉施設を建てるためのノウハウを持ち、土地コストを削減しつつ、幅広い建設地選定が可能。競合他社と土地を取り合う必要がなくなり、競争力強化につながる。
障がい者向けグループホームを自社運営し、現場での課題に精通。入居者募集・スタッフ採用・人員の配置まで実践的にサポート。
| 種別 | 障がい者GH |
|---|---|
| 規模 | 記載なし |
| 所在地 | 記載なし |
愛知・岐阜エリアで年間10棟以上のサ高住を手掛ける実績(2021年の実績)※2から、建物を規格化。
入居者が厚生年金の範囲内で無理なく払える家賃を起点に建設費を逆算し、事業としての安定性を優先した経営プランを提案します。
賃料保障のついた賃貸管理サービスを提供。日本管理センターと損保会社との提携で、保証賃料に保険がついており、収益性を担保※3。
| 種別 | サ高住 |
|---|---|
| 規模 | 記載なし |
| 所在地 | 愛知県豊橋市 |
※1参照元:タチ基ホーム公式HP(https://tachiki-home-tci.com/)
※2参照元:ネイブレイン公式HP(https://www.apart-kk.jp/s-grouphome/operator)
※3参照元:ネイブレイン公式HP|保証を受ける条件の詳細は、直接お問い合わせください。(https://nabrain-fukushi.com/lineup/service-home/)