特養の建設費用は規模や設備仕様で変わりますが、物価高騰の影響で上昇傾向にあります。
本記事では、福祉医療機構の2025年度調査を基に、建設費用の相場や金額を左右する要因を解説します。規模別の試算、開設に必要な総事業費の内訳、建設費を抑えるためのポイントも紹介します。
福祉医療機構(WAM)の2025年度調査によると、ユニット型特養の建設費の全国平均は、平米単価44.3万円、坪単価に換算すると約146.4万円です。これは2026年7月に公表された調査結果で、特養全般ではなく、ユニット型の新築工事を対象とした数値です。
愛知県を含む中部・北陸エリアについては、2024年度調査で34.7万円/㎡でしたが、2025年度調査ではサンプル数が少ないため地域別の数値が掲載されていません。34.7万円/㎡は過年度の参考値として扱い、現在の愛知県内の建設費は個別の見積もりで確認しましょう。
また、WAMの建築工事費は消費税込みで、設計監理費を含む金額です。土地造成費、既存建物の解体費、仮移転費などは含まれていません。工事費だけの見積もりとは集計範囲が異なるため、比較する際は内訳の確認が必要です。
建設費の概算は、延床面積に平米単価を掛けて計算できます。以下は、ユニット型特養について、比較用に定員1人当たりの延床面積を50㎡と仮定し、44.3万円/㎡で算出した例です。
この50㎡は、居室に加えて廊下や食堂、浴室、職員用スペースなどを含む建物全体の面積を定員で割った仮定値です。居室面積や法令上の最低基準、必ず必要になる面積を示すものではありません。
| 定員の仮定 | 延床面積の仮定 | 建築工事費の試算 |
|---|---|---|
| 50人 | 2,500㎡ | 約11.08億円 |
| 80人 | 4,000㎡ | 17.72億円 |
| 100人 | 5,000㎡ | 22.15億円 |
例えば、定員80人・延床面積4,000㎡なら「44.3万円×4,000㎡=17.72億円」となります。同じ80人でも、延床面積を3,600㎡と仮定すれば約15.95億円となり、面積設定によって概算額は変わります。
実際には、施設規模によって単価自体も変わるため、上記は一律の価格表ではありません。必要な諸室や職員の動線を整理し、計画に合った面積と単価で見積もりを取りましょう。
建設費は、施設の快適性や機能性をどこまで追求するかで変動します。居室の構成や共用スペースの配置によって、必要な間仕切りや水回り、設備の数量が変わるためです。
また、介護動線やバリアフリー設備の充実度、機械浴・厨房などの仕様も総工費に関わります。初期費用と、開設後の介助負担・維持管理費を合わせて判断することが大切です。
例えば、機械浴は購入価格だけでなく、入浴介助に必要な人数や時間、保守費用も確認しましょう。消防設備など、法令や施設条件に応じて必要となる設備は確保したうえで、仕様や配置を検討します。
土地の取得価格が安くても、造成や地盤改良、擁壁の整備などに費用がかかる場合があります。土地代と、その土地に施設を建てるための工事費を合計して比較することが重要です。
建物の構造や階数も検討項目です。平屋と複数階の建物では必要な敷地面積や基礎・屋根の規模、上下移動のための設備などが異なります。木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造も、用途や規模、防耐火上の条件を含めて比較し、構造だけで安さを判断しないようにしましょう。
見積もり前には、地盤や敷地の高低差、工事車両の進入条件、給排水設備の引き込み状況などを確認すると、後から発生する追加費用を把握しやすくなります。
資金計画を立てる際は、建物の建設にかかる費用だけでなく、土地の確保から開設準備、運営開始後の資金まで含めた総額を整理しましょう。主な確認項目は以下のとおりです。
| 費用区分 | 主な内容・確認事項 |
|---|---|
| 土地に関する費用 | 購入費、借地の場合の契約時費用、仲介・登記などの諸費用 |
| 敷地整備費 | 造成、地盤改良、擁壁、給排水の引き込みなど。工事見積もりへの計上有無を確認 |
| 建築・設備工事費 | 建物本体、電気、給排水、空調、消防設備など。厨房・浴室設備の範囲も確認 |
| 設計監理費・申請関係費 | 設計・工事監理、各種申請など。WAM単価を使う場合は設計監理費の二重計上に注意 |
| 外構工事費 | 駐車場、敷地内通路、フェンス、植栽など。建築工事の見積もりに含むか確認 |
| 備品・システム導入費 | 介護ベッド、家具、事務機器、介護記録システムなど |
| 開設準備費 | 職員採用、開設前の給与・研修、広報、消耗品の購入など |
| 運転資金・予備費 | 開設後の人件費・水道光熱費などの支払い資金、追加工事や価格変動への備え |
上記の費用は、すべてを建築工事費へ一律に上乗せするものではありません。工事契約や見積もりによって含まれる範囲が異なるため、項目ごとに「計上済み・別途必要」を確認してください。
建替えの場合は、既存建物の解体や仮移転、利用者の生活を維持しながら工事を進めるための費用も検討します。新築の平米単価だけでは把握できない支出を、早めに洗い出しておきましょう。
土地選定と建物計画は、できるだけ同時に進めることが重要です。早い段階から建設会社を検討に加えると、造成費がかさむ土地を避けられるほか、予算に応じた建物規模(延床面積)の調整もスムーズに行えます。
全体予算の目安を把握し、「必要な床面積」や「求められる土地条件」を整理しておけば、後戻りや余分なコストの発生を防ぎやすくなるでしょう。
併せて、建設予定地の自治体への相談や、補助制度・融資の確認も進めます。設計が固まった後で予算不足が分かると大きな変更につながるため、事業計画と資金計画を並行して検討しましょう。
複数社の見積もりを比較するときは、総額の安さだけでなく、工事範囲と仕様がそろっているかを確認してください。別途工事や設備費を加えると、当初の金額差が小さくなることもあります。
| 比較項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 規模・面積 | 定員、延床面積、併設施設の範囲が同じか |
| 設備・材料の仕様 | 機械浴、厨房、空調、内外装などの数量・性能がそろっているか |
| 別途費用 | 造成、外構、引き込み、設計監理、備品などに未計上の費用がないか |
| 税・価格条件 | 税込・税別の区分、見積もりの有効期限、価格改定条件が明確か |
| 工程・変更対応 | 工期の前提、追加工事や設計変更が生じた場合の費用の決め方が明確か |
減額案を受けた場合も、削減額とともに、使い勝手や清掃・修繕、職員の移動への影響を確認しましょう。開設後の負担が増える変更を避けるには、運営担当者も交えて検討することが大切です。
単なる見積金額の比較だけでなく、品質を維持しながらコストを適正化できる「実績豊富な会社」を選ぶことが、事業の成功において重要です。
豊富なノウハウを持つ企業であれば、予算内で建物の質を確保する材料選定や、必要な機能を保ちながらコストを抑える代替案について相談できます。特養の施工実績に加えて、計画している規模や運営形態に近い施設を手がけた経験も確認しましょう。
補助金申請の支援を依頼する場合は、図面や見積書の作成、申請書類の準備、自治体との調整など、どこまで対応できるかを確認してください。自社で行う業務と依頼する業務を明確にすることで、手続きの漏れを防ぎやすくなります。
建設予算を整理したら、補助金・融資・自己資金をどのように組み合わせるか検討します。補助金は対象や交付条件、融資は返済条件を確認し、それぞれの役割を分けて考えることが大切です。
愛知県では、地域医療介護総合確保基金を活用した介護施設等の整備・開設準備などへの支援が行われています。ただし、施設規模や整備内容によって対象となる事業や補助主体が異なるため、特養なら一律に同じ補助を受けられるとは限りません。
県の案内では、原則として事業実施の前年度に、整備予定地の市町村等へ事前協議を行う流れが示されています。また、補助主体の内示等の前に行った契約は対象外となる旨の注意があります。契約時期は、利用する制度の窓口へ事前に確認しましょう。
資金計画では、次の点も整理しておくと、建設中から開設後までの支払いを見通しやすくなります。
借入額が大きくなるほど開設後の返済負担にも関わるため、建設費の削減と、無理なく運営を続けられる資金計画を合わせて検討してください。
特養の建設費用を検討するときは、最新の相場と計画する施設の面積を確認したうえで、土地や開設準備、運転資金まで含めた総事業費を整理することが大切です。設計監理費や設備費は見積もりによって含まれる範囲が異なるため、重複や計上漏れにも注意しましょう。
早期の計画立案や補助制度の確認に加え、特養に精通した建設会社の知見を取り入れることで、費用と必要な機能のバランスを検討しやすくなります。重要なのは単なるコスト削減ではなく、長期的に安定運営できる施設を築ける相手を選ぶことです。
当メディアでは、福祉事業の成功率を高めたい方に向けて、介護福祉施設の種類別におすすめの建設会社を紹介しています。併せてご確認ください。
名古屋市を中心に愛知・岐阜で年間約5棟の医療・福祉施設の実績あり(2026年1月調査時点)※1。木造建築に特化して35年。仕入れ値や人件費を抑え、鉄骨造などと比べて坪単価で約30万円ほど削減できる。
グループ会社が訪問看護ステーションや有料老人ホームを運営。 介護関連の資格者であるスタッフが、直近の医療・福祉制度を踏まえ、開設前のサポートなど幅広く対応。
| 種別 | 住宅型有料老人ホーム (ナーシングホーム) |
|---|---|
| 規模 | 26室 |
| 所在地 | 愛知県名古屋市守山区 |
調整区域に福祉施設を建てるためのノウハウを持ち、土地コストを削減しつつ、幅広い建設地選定が可能。競合他社と土地を取り合う必要がなくなり、競争力強化につながる。
障がい者向けグループホームを自社運営し、現場での課題に精通。入居者募集・スタッフ採用・人員の配置まで実践的にサポート。
| 種別 | 障がい者GH |
|---|---|
| 規模 | 記載なし |
| 所在地 | 記載なし |
愛知・岐阜エリアで年間10棟以上のサ高住を手掛ける実績(2021年の実績)※2から、建物を規格化。
入居者が厚生年金の範囲内で無理なく払える家賃を起点に建設費を逆算し、事業としての安定性を優先した経営プランを提案します。
賃料保障のついた賃貸管理サービスを提供。日本管理センターと損保会社との提携で、保証賃料に保険がついており、収益性を担保※3。
| 種別 | サ高住 |
|---|---|
| 規模 | 記載なし |
| 所在地 | 愛知県豊橋市 |
※1参照元:タチ基ホーム公式HP(https://tachiki-home-tci.com/)
※2参照元:ネイブレイン公式HP(https://www.apart-kk.jp/s-grouphome/operator)
※3参照元:ネイブレイン公式HP|保証を受ける条件の詳細は、直接お問い合わせください。(https://nabrain-fukushi.com/lineup/service-home/)