特別養護老人ホーム(特養)の建設には多額の費用が必要となりますが、施設の規模や整備内容、地域によっては補助金・助成制度を利用できる場合があります。
本記事では、最新の調査データをもとに特養の建設費用の目安を紹介するとともに、特養の建設・開設時に活用できる補助制度や、愛知県における補助金の例、申請時の注意点を解説します。建設費を抑えながら無理のない資金計画を立てるための参考にしてください。
独立行政法人福祉医療機構(WAM)が公表した2025年度の調査によると、ユニット型特別養護老人ホームの建設費は、全国平均で平米単価44.3万円となっています。前年度の38.7万円から14.2%上昇し、2008年度の調査開始以降で最も高い水準となりました。
また、2025年度の定員1人当たり延床面積は全国平均42.0㎡、定員1人当たり建設費は1,832.5万円です。単純計算すると、定員80人の特養では建設費だけで約14億6,600万円が一つの参考値となります。
ただし、WAMの建築工事費には設計監理費が含まれる一方、土地造成費や既存建物の解体費、仮移転費などは含まれていません。実際の開設に必要となる総事業費は、建設費に加えて土地・造成・外構・設備・備品・開設準備なども含めて検討する必要があります。
建設費は、施設の規模や居室構成、導入する設備によって大きく変動します。全室個室のユニット型では、多床室と比較して居室ごとの壁や設備が増えることなどから、建築面積や設備仕様が建設費を左右する大きな要因の一つとなります。
また、介護動線やバリアフリー設備、機械浴、厨房、スプリンクラーなどの仕様によっても総工費は変わります。初期投資だけでなく、開設後の職員配置や業務効率、メンテナンスなども考慮しながら、必要な設備を検討することが重要です。
特養の建設・整備では、国の地域医療介護総合確保基金を財源とした補助制度や、自治体が実施する支援制度などを利用できる場合があります。
ただし、全国の特養に一律で同じ金額が交付される「特養建設補助金」があるわけではありません。施設の定員や整備内容、建設地域、自治体の介護保険事業計画、公募状況などによって、利用できる制度や補助額は異なります。
特養の建設を検討する際には、整備予定地の自治体でどの制度が実施されているかを早い段階で確認しましょう。
特養の整備で確認しておきたい代表的な仕組みが、厚生労働省の「地域医療介護総合確保基金」です。都道府県計画に基づき、地域の実情に応じた介護サービス提供体制の整備を支援しています。
基金を活用した事業には、地域密着型特別養護老人ホームの施設整備をはじめ、施設の開設準備、定期借地権設定時の一時金、既存施設の改修などがあります。
実際にどの事業を実施するか、どの施設を対象とするか、補助額をどのように設定するかは自治体によって異なります。国の制度だけではなく、建設予定地の都道府県や市区町村が公表している交付要綱や公募情報を確認することが重要です。
特養の補助制度を確認する際には、計画している施設が「広域型」か「地域密着型」かを確認する必要があります。地域密着型特別養護老人ホームは定員29人以下、一般的な広域型特養は定員30人以上です。
地域医療介護総合確保基金を活用した施設整備では、定員29人以下の地域密着型特養について、新設などの施設整備を対象とした助成制度が設けられています。
一方、広域型特養については、地域密着型特養と同じ新築整備の補助単価がそのまま適用されるわけではありません。開設準備、大規模修繕、改築、定期借地権など、事業内容ごとに利用できる制度を確認する必要があります。
愛知県では、地域医療介護総合確保基金を活用した「愛知県介護施設等整備事業費補助金」を設けています。
2026年8月28日時点の交付要綱では、特養に関連する主な補助単価として以下が定められています。
| 事業 | 主な対象 | 補助単価 |
|---|---|---|
| 地域密着型サービス施設等の整備 | 地域密着型特別養護老人ホーム・併設ショートステイ用居室 | 596万円/整備床 |
| 施設開設準備経費支援 | 定員30人以上の特別養護老人ホーム・併設ショートステイ用居室 | 112万円/定員 |
| 施設開設準備経費支援 | 定員29人以下の地域密着型特別養護老人ホーム・併設ショートステイ用居室 | 112万円/定員 |
例えば、地域密着型特養の施設整備については、1床当たり596万円の補助単価が設定されています。ただし、「596万円×整備床数」がそのまま必ず交付されるという意味ではありません。対象経費や事業内容、自治体の予算・審査などによって実際の交付額は変わります。
また、愛知県内でも県が補助主体となる事業と、市町村等が補助主体となる事業があります。市町村補助事業では対象事業や補助単価等が異なる場合があるため、整備予定地が決まった段階で所在地の市町村等へ確認しましょう。
特養の用地を購入するのではなく、定期借地権を設定して確保する場合には、定期借地権設定時の一時金に対する補助制度を利用できる場合があります。
愛知県の制度では、広域型施設と地域密着型施設の双方について定期借地権設定のための一時金支援事業が設けられています。土地を購入するか借りるかによっても利用できる支援制度が変わるため、用地確保の方法を検討する段階から制度を確認しておくことが大切です。
補助対象となる一時金や補助率には条件があるため、実際に利用する際は自治体の交付要綱を確認してください。
特養に関連する補助制度は、建物を新築する費用だけを対象とするものではありません。制度によっては、開設準備や用地確保、既存施設の改修なども支援対象となります。
| 費用・整備内容 | 利用を検討できる制度の例 |
|---|---|
| 地域密着型特養の建設・整備 | 地域密着型サービス施設等整備助成事業 |
| 開設前に必要な家具・備品等 | 施設開設準備経費支援事業 |
| 開設前の職員雇用・研修等 | 施設開設準備経費支援事業 |
| 定期借地権設定時の一時金 | 定期借地権設定のための一時金支援事業 |
| 既存施設のユニット化 | 既存特養等のユニット化改修支援事業 |
| 多床室のプライバシー保護改修 | 既存特養の改修支援事業 |
| 大規模修繕とあわせて行う介護テクノロジー導入 | 介護テクノロジー導入支援事業 |
例えば、愛知県の施設開設準備経費支援事業では、備品購入費のほか、報酬、給料、職員手当、共済費、旅費、委託料などが対象経費として示されています。一方、施設開所後に発生するクラウド利用料やリース料などは対象外とされています。
このように、同じ特養の建設・開設に必要な費用でも、すべてが補助対象になるとは限りません。資金計画を立てる際は、「総事業費」と「補助対象経費」を分けて整理することが重要です。
特養の建設で補助制度を利用する場合、建物の設計や施工会社選定と並行して、早い段階から申請スケジュールを確認する必要があります。
愛知県の介護施設等整備事業費補助金では、申請手続きの一例として以下の流れが示されています。
| 時期の目安 | 主な手続き |
|---|---|
| 整備前年度の6~7月頃 | 整備予定地の市町村等へ事前協議 |
| 整備年度の5~9月頃 | 県等から内示 |
| 内示・交付決定後 | 契約等の手続きを開始 |
| 年度末まで | 事業完了・実績報告 |
特に押さえておきたいのが、建設する年度ではなく、その前年度から補助金の手続きが必要になる場合があることです。建築計画や土地取得が進んでから補助金を調べ始めると、事前協議や公募に間に合わない可能性があります。
なお、実際の時期や手続きは市町村等によって異なる場合があります。補助金を利用したい事業がある場合は、施設整備予定地の自治体に早めに相談しましょう。
補助制度を利用する予定がある場合は、契約や工事を開始できる時期を必ず確認しましょう。愛知県では、各補助主体の内示等より前に行った契約は補助対象外とされています。
工期を優先して施工契約などを先に進めると、その他の条件を満たしていても補助対象にならない可能性があります。設計、施工会社選定、自治体との事前協議、補助金申請を一つのスケジュールとして管理することが重要です。
交付要件を満たしていても、希望する補助金を必ず受けられるとは限りません。自治体の介護施設整備方針や公募、審査、予算などの影響を受けるためです。
補助金の交付だけを前提に資金計画を立てず、自己資金や融資も含めて資金調達を検討することが重要です。補助金が想定より少ない場合や交付を受けられない場合でも事業を進められるか、あらかじめ確認しておきましょう。
特養の補助制度は、都道府県が直接補助する事業だけでなく、市町村等が補助主体となる事業もあります。対象となる施設や補助単価、申請時期なども自治体によって異なる場合があります。
また、特養の整備は自治体の介護保険事業計画や施設整備方針とも関係します。土地を購入した後ではなく、候補地を検討している段階から自治体へ相談することで、想定していた施設整備や補助制度を利用できないといったリスクを抑えやすくなります。
土地選定と建物計画は、できるだけ同時に進めることが重要です。早い段階から建設会社を検討に加えると、造成費がかさむ土地を避けられるほか、予算に応じた建物規模や延床面積の調整も進めやすくなります。
さらに補助金を利用する場合は、自治体への事前協議や公募が建設前年度から始まるケースもあります。「必要な床面積」「土地条件」「利用できる補助制度」「申請時期」を早い段階で整理することで、計画の後戻りや余分なコスト、補助金の申請機会を逃すリスクを抑えられます。
単なる見積金額の比較だけでなく、特養の建設実績があり、施設基準や補助制度を踏まえた計画を提案できる会社を選ぶことも重要です。
特養建設の経験が豊富な企業であれば、予算に応じた建物規模や仕様の調整、介護動線を踏まえた設計、補助対象となる工事とその他の費用を意識した見積もりなどについて相談しやすくなります。
補助金の申請主体や正式な手続きは制度によって異なりますが、自治体との協議に必要となる建築計画や見積書などを円滑に準備するためにも、早い段階から専門知識を持つ建設会社と連携するとよいでしょう。
いいえ。特養の整備に利用できる補助制度はありますが、施設規模や整備内容、自治体の介護保険事業計画、公募状況、予算などによって対象となるかが異なります。計画の初期段階で建設予定地の自治体へ確認してください。
補助単価は自治体や年度によって異なります。例えば愛知県では、2026年8月28日時点の交付要綱で、地域密着型特別養護老人ホームおよび併設ショートステイ用居室の施設整備について596万円/整備床という単価が定められています。ただし、実際に596万円が必ず交付されるわけではありません。
利用できる場合があります。ただし、地域密着型特養と同じ施設整備補助が適用されるとは限りません。開設準備、定期借地権、大規模修繕、改築など、事業内容に応じた制度を確認する必要があります。
対象となる制度があります。愛知県では、広域型特養・地域密着型特養とも、施設開設準備経費支援について112万円/定員という単価が定められています。備品購入費や開設前の人件費等が対象となり得ますが、対象経費には条件があります。
制度によっては間に合わない可能性があります。愛知県では、事業実施の前年度に事前協議を行う必要があり、内示等より前に行った契約は補助対象外とされています。補助制度の利用を考えている場合は、建設計画の初期段階から自治体へ相談しましょう。
特養の建設費は高騰しており、福祉医療機構の2025年度調査では、ユニット型特養の建設費は全国平均44.3万円/㎡、定員1人当たり1,832.5万円となっています。
一方、特養の建設・開設では、地域医療介護総合確保基金を活用した施設整備、開設準備、定期借地権などの補助制度を利用できる場合があります。愛知県では、地域密着型特養の施設整備について596万円/整備床、施設開設準備について112万円/定員という補助単価が設定されています。
ただし、利用できる制度や補助額、申請時期は施設規模・整備内容・自治体によって異なるため、土地取得や建設契約を進める前に、整備予定地の自治体へ相談することが重要です。
建設費そのものだけでなく、補助金・自己資金・融資を含めた総合的な資金計画を立て、特養建設の実績を持つ専門家と早期に計画を進めることで、予算超過や申請漏れなどのリスクを抑えやすくなります。
当メディアでは、福祉事業の成功率を高めたい方に向けて、介護福祉施設の種類別におすすめの建設会社を紹介しています。特養の建設計画や費用について相談する会社を探している方は、併せてご確認ください。
名古屋市を中心に愛知・岐阜で年間約5棟の医療・福祉施設の実績あり(2026年1月調査時点)※1。木造建築に特化し、鉄骨造より建築費用を抑えられる点を生かして、施設建設の初期投資を抑えている。
グループ会社が訪問看護ステーションや有料老人ホームを運営。 介護関連の資格者であるスタッフが、直近の医療・福祉制度を踏まえ、開設前のサポートなど幅広く対応。
| 種別 | 住宅型有料老人ホーム (ナーシングホーム) |
|---|---|
| 規模 | 26室 |
| 所在地 | 愛知県名古屋市守山区 |
調整区域に福祉施設を建てるためのノウハウを持ち、土地コストを削減しつつ、幅広い建設地選定が可能。競合他社と土地を取り合う必要がなくなり、競争力強化につながる。
障がい者向けグループホームを自社運営し、現場での課題に精通。入居者募集・スタッフ採用・人員の配置まで実践的にサポート。
| 種別 | 障がい者GH |
|---|---|
| 規模 | 記載なし |
| 所在地 | 記載なし |
愛知・岐阜エリアで年間10棟以上のサ高住を手掛ける実績(2021年の実績)※2から、建物を規格化。
入居者が厚生年金の範囲内で無理なく払える家賃を起点に建設費を逆算し、事業としての安定性を優先した経営プランを提案します。
賃料保障のついた賃貸管理サービスを提供。日本管理センターと損保会社との提携で、保証賃料に保険がついており、収益性を担保※3。
| 種別 | サ高住 |
|---|---|
| 規模 | 記載なし |
| 所在地 | 愛知県豊橋市 |
※1参照元:タチ基ホーム公式HP(https://tachiki-home-tci.com/)
※2参照元:ネイブレイン公式HP(https://www.apart-kk.jp/s-grouphome/operator)
※3参照元:ネイブレイン公式HP|保証を受ける条件の詳細は、直接お問い合わせください。(https://nabrain-fukushi.com/lineup/service-home/)